春に多い肥料あたり

春に多い肥料あたり

 生産者の人なら誰でも大なり小なり「肥料あたり」を経験しているのではないだろうか。投入した肥料が裏目に出て、まったく元も子もなくしてしまう事である。


 人間でも食あたりというのがある。食中毒になるほどひどいものではないけれど、お腹が痛くなって下痢を繰り返し、気分の悪い時間を過ごす事である。食あたりであれば胃薬を飲み、二食〜三食の食事を抜いてお粥でも食べればすぐに回復する。しかし、畑はそうはいかないのである。

 特に今年は春になっても温度が上がらずに寒い。豪雪で山にも畑にも雪が多く残っている。山の雪が融けだす時期が遅くなる。そうなると畑も稲田も過剰水分という事になる。このような年は「肥料あたり」に要主意なのである。

 「肥料あたり」が出るとすぐには回復できない。悪くすると翌年の作物まで影響してしまう。「肥料あたり」で土壌が壊れてしまうからである。酸素もなくなり、膨軟性もなくなり、善玉微生物もいなくなる。まさに土壌が壊れるのである。

 肥料あたりが一番起きやすいのは春先である。なぜ春先に多いのだろうか。?雪融け水による水分過剰?急な肥料の分解?天然の肥料成分、この三つが原因なのである。このような状況ななると、どうして肥料あたりを起こすのだろうか。そもそも肥料あたりって何だろうか。

 肥料としての有機物が土壌に投入される。土壌の中に水分が多すぎると酸素が不足して分解が中途半端になる。分解が中途半端になると有機酸が発生する。有機酸が多くなると強い硫化水素(硫黄)に変化する。硫黄は強酸性で毒性が強い。ドブのような悪臭が出る。肥料あたりを起こすのである。しかも、このような肥料あたりを起こすのは優良で高額なものに多いのである。魚粕、ス豆粕、ナタネ粕、鶏糞、牛糞などである。高価なお金を払って肥料あたりでは、目もあてられないのである。
春先になぜ肥料あたりが多いかをさらに詳しく見てみよう。

?雪融けによる水分過剰

 水分過剰になると、ほ場はジメジメしている状態になる。なかなか乾かない。時間が来る。ジメジメしていると思っていても耕起を始める。ロータリ耕で耕起する。ロータリだから土を細かく砕く。水分が多く酸欠状態なのに、さらに土をねってしまい酸欠がひどくなる。そこへ肥料を入れたら醗酵分解ではなく、腐敗する。異常還元が発生する。

?急な肥料の分解

 春先はどんどん暖かくなる。温度が上昇する。一日一日が違う。温度は上がるほど肥料分解は早くなる。たくさん肥料を入れればそれだけ酸素を必要とする。分解の速度に酸素量が追いつかなくなる。酸欠になって肥料あたりする。
 特に注意が必要なのは火山灰土でよく見かける透明マルチである。地温を上げるには大変な効果がある。しかし、温度が上がりすぎると問題が出てくる。温度が上がれば土壌から水分が出てくる。マルチに水滴が付着する。肥料の濃度障害を引き起こす原因になる。
 春の温度が思った以上に上昇する事は要注意なのである。天候は自然のものでどうにもならないから投入する肥料の量を減らした方がコントロールできるのである。

?天然の肥料成分

 春になると天然の肥料成分が自然に出てくる。どうして野山にある樹や草花が花を咲かせ、実がなると思いますか。自然が肥料を作り出すからである。どれくらいかと言うと10アール、10cmの深さでチッソ量2kgである。草花が育つには充分な量である。理論上だけで言うと肥料なしでも作物は育つのである。
 肥料あたりを起こしやすい作物をあげておきましょう。?人参?大根?ゴボウ?ほうれん草?キャベツの順番である。その理由は酸素を多く必要とする作物だからである。

◎肥料あたりの防止策

?荒く耕す
 ロータリー耕で過細土にすると酸欠になる。過細土にしないで荒く耕すことが必要になる。この方法は湿気を含んだ土ほど効果が出る。酸素が土の中に触れやすくなって乾燥が早まるからである。ロータリーに変わるアタッチメントというのが出ているので利用をおすすめしたい。

?土壌のたて浸透をよくする。
 土壌のたて浸透は基本中の基本である。たて浸透をよくするには深度破砕する。排水をよくする。暗渠排水をするなどである。

?肥料を少なくする。
玄米アミノ酸ぼかしなどの微生物肥料を入れて、春の施肥は少なめにする。

 肥料あたりと害虫についても少し触れておきたいと思う。害虫は春に卵から羽化し始める。害虫が小さいうちにほ場周囲の雑草についているものを殺虫するのも手なのである。害虫対策の殺虫をするなら春が一番いいという事を頭に入れてもらいたい。もちろん肥料あたりをすると土壌から害虫がどんどん発生することも忘れないで欲しい。

 害虫に関連して除草にも触れておきたい。春の除草効果は夏場より2倍〜3倍遅く効果が出る。かけすぎないようにする事が大切である。特に湿っている状態では結果が出にくい。乾燥した状態で使用するとよい。発芽前の除草はこの条件が必ず必要になる。

 春に多い肥料あたりと、それに関連する害虫、除草対策をお伝えした。今年は水分過剰なので、ほ場をよく乾かしてから耕起することを忘れないようにしてほしい。それが一番の肥料あたり対策である。

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