石灰過剰が野菜畑を壊している

石灰過剰が野菜畑を壊している

 野菜は作物ごとに土壌のペーハーが違うのはなぜなのか。考えたことがあるのだろうか。「種や苗を買う時に袋の裏に書いてあるから、その通りにやっているよ。」それはそうでしょう。ほとんどの人が疑問に思うことなく栽培をしているのではないだろうか。


 土壌ペーハーには野菜作物の原産地が隠れている。原産地は日本ではない場合が多い。環境も違えば土壌の状態も違う。植物が持って生まれた性質は変化しない。ある程度、適応はするが原産地の環境をそのまま種に性質を持つことになる。

 現在の日本では世界各地の野菜が数多く生産されている。品種改良もされていて、生産技術も複雑化している。大型生産方式が定着して日本古来の在来種は年々、姿を消している状態である。日本の国土に適した在来種の野菜は生産量が少なく維持していくのがむずかしいのである。

 日本の土壌は酸性土壌である。雨もよく降って火山灰土である。その中でアルカリ性の作物を育てようとすると育たない。この場合は土壌のペーハーをアルカリにするわけである。また火山灰土にはリン酸分がない。リン酸と石灰を大量に投入しないと野菜は育ちにくい土壌なのである。

 戦後、開拓団というのがあった。終戦後、食糧のない時に山間地の開拓をしたのである。大変な苦労をした。石灰とリン酸欠乏で何も収穫できず飢えて命を落とした人も少なくないのである。わずか50年〜60年の話である。戦後の悲劇があったのである。しかし、もう語られることもない。それから石灰とリン酸の大量投入が始まったのである。もちろん豊かな資金を背景に外国からドンドン輸入をした。

 そして現在でも石灰とリン酸はドンドン入れなさいという指導が継続している。それは正しいことなのだろうか。かなり大雑把な話と言えないだろうか。石灰、リン酸、マグネシウムを投入する事が習慣になって、「ねばならない」と義務になってしまっている。これを投入し続けると当然、過剰になる。過剰になるとどうなるか。不足よりも、もっとひどいことになる。作物が育たなくなる。土壌に入れた物は取り出すことができない。作地
の放棄より方法がなくなる。

 決定的なダメージは微量要素がまったく効果が出なくなる事である。マンガン・ホウ素・亜鉛・モリブデンなどは味に大きく関係している。売物にならないような野菜しか作れ
なくなる。

 さらに大きな問題は10cm程度の表層では過剰でも、その下の土壌では不足になっているのである。このような問題は主に野菜畑で起っている。しかも大型産地での被害は深刻なものがある。

 果樹畑や水田ではもともとこのような作業が必要ない為に土壌ペーハーが問題になることはない。対策はどのようにすればよいかを言う前に「盲目的に石灰、マグネシウム、リン酸を投入する事は非常に危険である」と再度伝えたいのである。ペーハーは必ず計測する習慣を持ってほしいのである。しかも10 cm、20cm、30 cmの3ヶ所ぐらいは計測をしてほしいのである。毎日やれと言うわけではなく、栽培をする前と後にやれば土壌の状態はつかめる。

 さて石灰過剰のアルカリ性対策であるが、硫黄のパウダーが販売されている。20
kg2000円程度である。10アールに30kgを手に一回ぐらいまけば、かなり改善できると思う。

 もちろんペーハーが改善されれば、それでいいというわけではない。有機物や玄米アミノ酸のぼかしを投入して土壌改善も同時にやってほしい。

 土壌ペーハーで一番問題になるのが輪作である。どちらかが犠牲になる。お金のなる野菜の方にあわせて栽培する。裏作にするものはほとんど収入にならないという事である。

 どちらも上手に収穫している日とっていないの?もちろんいる。それには高度な生産技術が必要になる。それにはオールマイティな微生物に活躍してもらうしかない。土を深く耕し、酸素を十分に入れて、微生物が繁殖しやすい環境を作る。そして完熟の醗酵肥料を入れる。このようにすれば土に柔軟性が出てくる。野菜の好む環境に土が変化してくれるのである。微生物は実に働き者で便利なものである。土づくりが上手にできている人は輪作して表も裏も収入にしているのである。目先の石灰やマグネシウムだけでペーハー調整をしているわけではないのである。

 野菜を栽培する場合には原産地をよく確かめることである。例えばトマトは南米である。雨が少なく排水がよく地下水が豊富である。ほうれん草なら中近東である。降雨量が極端に少ない。稲はタイ国で雨量が多い所で育つ。原産地の環境イメージができているとどのように育てれば良いかという基本がわかってくる。 

 これからの野菜栽培はさらに多様化してくるだろうと思う。新品種が次々に出てくる。品種改良をするにしても必ず原産国があるはずである。なぜペーハーがアルカリなのか酸性なのか、その答えは原産国にある。もっと言えばその原産国ではどのように栽培して成功しているのかを知ると栽培の大きなヒントになると思う。

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