金持ち農家と貧乏農家の差はどこから生まれてくるのか。
生産者は大きく二つに大別されるようになった。貧乏から抜けられない人と豊かな生活を手に入れる人である。この差はどこから出てくるのだろうか。
農産物を栽培して生産するところまでは何も変わらない。その次にやることが違っている。作った物を人に任せてしまう人と自分で販売する人がいる。
作った生産物を人に任せてしまうと、もうその先は何も分らなくなくなる。旨いのか、まずいのか、何が問題かも。何も返ってこない。これだけではない。自分の作ったものがどのくらいの価値があり、どのくらいの価格で売りたいのかも自分では決められない。人任せになる。
売ってくれる人が自分の作ったものだけを売ってくれるならまだいい。そんな虫のいい話はありえない。売ってくれる人が仕事熱心で売ったお客様から「こうしてくれ」「ああしてくれ」と要望があったというならまだいい。それもありえない。いくつも業者を通して販売されるからであり、その業者は生産物に興味はあっても生産者には興味がない。
そうすると人任せで生産物を販売している人はどこで自分の生産物の付加価値をあげることができるのだろうか。チャンスはどこにもない。作ったものを誰が買ってくれているかもわからない。値段も決められないから何を工夫していいのかも分らない状態で物を作っていることになる。ここには生きがいもなければ張り合いも無い。まことにつまらない寂しい世界である。
それでは直接にお客様に自分の生産物を販売している人はどうだろうか。直接に売っているわけだから誰に売っているのかがわかっている。買った人は物言う。良かった。悪かった。値段が高い。値段が安い。もっと売れるから作付けを増やしてくれ。もう売れないからこの生産物は中止してくれ。個人の人でも、「あ〜おいしかったわよ。もうないの」などと必ず反応が返ってくる。
この反応が大切なのである。生産者の刺激になる。どれを旨いといっているか。何がダメと言っているのか理解できるようになる。そうすると次の作付けと栽培では何をやればよいのかがはっきりしてくる。
お客様の話をいろいろと聞く中で自分が作っている生産物の価値がわかるようになる。自分が生産している作物は価値のあるものなのか。ないものなのかまでわかるようになる。価値がわかれば自分で作ったものに自分で価値をつけるようになる。
たくさん物を作ればいいというわけでもないこともわかってくる。いいものを作ればお客さんが喜んでくれて、お客さんがリピーターとして毎回、買ってくれるようになる。
栽培で苦労した事も話ができる。形が悪くても味がよければ認めてくれる。農薬を使わずにがんばった苦労も認めてくれる。大きさが不揃いでも旨ければお金を払ってくれる。全部、自分の仕事の励みになる。直接、売るわけだから収益もグーンとアップする。自分が農業で生産していることの喜びが沸いてくる。
実は農業生産に限らず、物づくりはすべて同じプロセス・パターンなのである。このようなプロセス(経過)を経てお客様を作り利益を作り出していくのである。
この観点からもう一度、現在の商品審査基準を見直してみると、いろいろな問題が見えてくる。現在の審査基準は一律である。生産者がどんな努力したのかは関係ない。作物だけを見て一律で審査される。結果さえ良ければ何でもありありである。この一律の審査基準は流通のどこにおいても基準になる。
生産者の苦労や夢はどこにも出てこない。もっとも良い例が新潟産コシヒカリBLである。イモチに強い。倒伏しない品種が作られた。面積の広い者勝ちである。味はおいしくない。大不評。まじめにコシヒカリを作った人は大損である。なぜなら価格が60kg、15000円割れと、コシヒカリ発売以来の最低価格になったからである。
みんなで一緒に一律にやって良い時代もあった。ところが現在は一律でやることに欠点ばかり目立ち始めたのである。行政からは農薬は減らせ、DAPをやれ、トレーサビリティーを記録しろとやかましく言われている。
これには理由がある。「集団でやる」、「一律でやる」、時代は終わったと言っているのである。生産者は自立しなさいというメッセージなのである。生産者は生産の仕事だけでなく販売も経営もやりなさいと言っているのである。その方がはるかに仕事が楽しくて利益も出るとお上が言っているのである。
ところが、ほとんどの人は過去の栄光と習慣にしがみついている。例えば、農業機械にしても外国の機械は価格が1/2〜1/3。耐久性は10倍である。日本の機械は質が悪く、高い、耐久性は1/10である。補助金にしがみついてきた結果である。そのツケがまた生産者に回ってきて泣きを見るのは生産者なのである。生産者が自立することでこの悪循環が断ち切れる。悪循環の中にいれば貧乏から抜けられない。それでもまだあなたは販売を人任せにして生産を続けていくのでしょうか。これは今後の大きなテーマである。
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